中尾の宿.野沢・・スキーを持って風呂に浸かる 中尾の宿.野沢 夜道 凍るほどに冷え切った国道を突っ走ること5時間.川中島を過ぎ千曲川を下って行く。 長野市内で見受けられた斑な残り雪も国道を埋め尽くし.田園を埋め尽くしていた。 狭い街道を突っ切った車はチェーンが巻かれると裸電球に照らされた飯山の町並が現れる。 急に増してきた積雪に雪白く街道を埋め尽くしていた。 中尾には更に広々とした雪覆う田園を過ぎ.モヤの湧き上がる河原を横切って.山裾野へと入って行く。 そして戸狩への県道を分け合うとトンネルを潜り中尾の宿が現れる。 軒下を埋め尽くすドカ雪が中尾村を埋め.野沢を埋めている。 大鋸に勧められ益田君の縁で立教男児5名が.ここ野沢にやってきた。 中尾の宿 益田君の親戚と云う民宿「ふるさと」は表通りから2.3分奥へ入った所あり, 後から知ったことだがスキー場からも.真直ぐ滑って来られる。 まだ夜が明けるか明けない時刻に.叔母さんが親しげに出迎えて下さった。 アベカワに暖かい汁粉が美味しい。闇を破って食堂の広い窓には聡明な夜明けの妙高山が姿を現わしている。 もう僕は寝たい程疲れ.瞼は塞がれ掛けているも豊かな積雪に見惚れし心が踊っている。 二階に寝床を取って目を覚めたのが10時,厚いカーテンを引くと強い陽差しが. 大空の澄み切った山気を含み.流れ込んできた。眩い陽の白銀が蒼空に踊り鳴り続けていた。 共同風呂 池ノ平までリフトで登り,ひと滑りして来た後の湯殿は気持が良い一言に尽きる。 湯舟には満々と湯が満たされ.溢れる湯が何とも心地よい。 朝.わざわざ村の共同風呂に入りにきた。5の付く日は,湯殿を洗う為,湯を抜いてしまうとのこと。 着いたばかりでサンダルを突っ掛け雪径を来たものの.風呂の栓は抜かれた後だった。 夜明けを迎えた凍る雪径は滑り易く.又踏み跡からバランスを崩すとよく腿まで潜る。 サンダルを履いて来たことをぼやき.ひと浴びして寝ようと思うも湯舟の湯はなかった。 スキーを終え.軒を埋め尽くす集落を縫い.裏道を外さぬよう教えられる間々.風呂に飛び込んだ。 コケアカのような黒い湯の花が冷え切った体を足元から温める。 我慢出来ぬ熱さがジーンと体の芯まで温めている。 スキーを外し風呂場の脇に立て.飛び込む湯殿ほど楽しいことはない。 共同風呂らしく天井が高く.裸になり棚に衣類棚に放り込み.その間々直接湯に飛び込むのも面白い。 まして頑丈な丸太柱で組んだ風呂は古くからの年輪が刻まれ.気をも静める風呂だった。 清掃していた地元の人々が出て行くと.暫くの間.湯殿は僕一人だけになった。 隣の女湯から親子らしい会話が天井を通し響いてくる。男湯にも親子連れが現れた。 入浴を済まし戸口を開けると一陣の肌寒い旋風が雪屑を巻き込み.僕の所へ流れ込んできた。 僕は一瞬身振いをして深く沈み込む。 明日は仕事がありもう帰えらねばならない。 こんな遠くまで来て日帰りせねばならぬと学生の時が羨ましく.又今が滑稽にも思えた。 帰りリンゴ園をしている遠藤文子さんと云う僕と同じ年頃の女の子に知り会った。 少し背は低いがチャーミングな顔形をし頭の良さそうな女の子。 冬の間民宿.「ふるさと」に手伝いに来ていると言っていた。 帰りぎは駅の近くだからと家まで教え.僕と大鋸を見送って下さった。 彼女の最後の一言は,リンゴの花が咲く頃.遊びに来て下さい。待っていると。 ガラガラの列車は暖房の利かぬ車内で身を丸め.雪中の長野にでた。 45年01月25日 山径Top |