西上州の溶岩台地に乗る荒船山. 妙義荒船佐久高原国定公園に属する日本二百名山の一つ。
      西上州.上信国境の台地・・群馬のカラッ風を受け.下仁田の里山・内山峠から荒船山をピストン

     12.25. 下高原から鹿岳,四ッ又山
     12.26. 内山峠から木枯らし唸る荒船山ピストン=吉井IC

    航空母艦
     荒船山は荒海を航海する航空母艦のようだとよく例えられている。船尾は北側のトモ岩に当たる。
   山容は南北約2km.東西約400mの安山岩でできた台地に平坦な頂と切り立った約200mの崖があり.南北に帯のよう延びる形相をもっている。

     昔それもずーと昔.私が小学生の中半頃.横須賀港で米空母「レンジャー」に乗船する機会を頂き見学したことがある。
   当時は小学生と幼かった為.親戚の高校生に連れられよく海上自衛隊や米軍基地に通っていた。戦闘機を載せる大型のエレベーターが2基あったと思う。
   些細なことだが当時既にコーヒーが自由に飲める自動コーヒー機が船内の各所に設けられていた。勿論無料である。

     まだ小学校の給食では脱脂粉乳の配給を受けていた時代だった。幼いながら食に飢えていた時代。
   当時は大学生.社会人に混ざり.義理の兄と共に小学生は私一人.海上自衛隊の一般者向け演習合宿にも参加させて頂いていた。

     忘れていた空母。今回は大地にどっしり構えた高度1356mに聳える荒船山に乗船する。宿から信州街道を西進し林道から内山峠にでて
   荒船山の北肩まで登り.トモ岩から溶岩台地の南端.経塚山までピストンする。コースはもう少し見つめるべき点があったが.今日も冷たい北風の一日だった。

   内山峠へアプローチ.9:05

    12月26日(sun)快晴風強し.
      「常盤館」8:00=9:00内山峠:10一10:00一杯水手前:10一10:20トモ岩:30一11:00経塚入口:30⇔経塚山,
      一11:45トモ岩12:00一12:35大13:00一13:35内山峠:40.

     ひと風呂浴び7時半朝食.8時には下仁田の旅籠をでている。今日も素晴らしい晴天に恵まれた。
   宿の直ぐ西側の上町T字路交差点の左側奥は昨日鹿岳は昨日登った街道口。今朝は道路標識に従い右折し.信州街道(R254.姫街道,富岡海道)に入る。

     向かう街道の正面のフロントガラスからは北側に聳える大桁山(おおげた)と鍬柄嶽(くわがらだけ.石尊山)が見上げられている。
   富岡市と下仁田町の間にあり.杉林に被われた山容の大桁山とその左隣りには対照的な釣鐘を伏せたような岩峰の鍬柄山が聳えている。
   そしてその間には昨日潜った送電線新榛名線が架かっていた。

     西牧川沿いにならい山裾を左から巻き込みながら西へ進路を取ると小坂川を隔でて.今度は雨宮山と御堂山が車窓の右側に見られるようなった。
   朝の明るい陽射しが河原沿いの信州街道を照らしだしていた。荒船山はこの街道の最も奥深い信州との境の内山峠に登山口がある。

     左側にはお伽の国のような名の物語山が現れ.物語山の頂からは雑木が切り開かれていた。その間からは荒船山の全貌が眺められ素晴らしい。 
   典型的な水平台地の長い荒船山の頂が驚くほどの大きさで聳えていた。

     途中荒船湖手前の藤井入口で右折し.県道43(姫街道もみじライン)に入れば神津牧場からの妙義荒船林道と和美峠で交わり.
   そこからはR17.軽井沢バイパスに抜けられていた。
   信州街道の町営バスは下仁田から市野萱(いちのかや)止まり.荒船山への登山口まで徒歩3時間.相沢以外はタクシーの利用になる。

    内山峠
     街道を峠のある内山隧道までマイカーで走り.少し戻って神津牧場への道と分れれば上信国境の内山峠にでる。広い駐車場に車が1台停まっていた。
   その横に並ぶよう停める。車中の彼(単独)は朝方.佐久側に街道を下り.荒船の山腹を巻きながら荒船不動尊から頂に立っていた。

     尾根沿いに内山峠へ迂回してきたと後に出会い語っている。地図を見ると以外と短い。峠から1時間で内山大橋.1時間で荒船不動.40分で星尾峠へ。
   同じ登山道を往復するより.可能なコースがあったと下山してから知る。残念この上もない。

    峠から尾根沿いをトモ岩へ
   峠の向かいがトモ岩.9:41

    北側の登山口
     今日は出っぱなしから風が強い。うなる風が歩くと共に襲ってきた。その上.朝風呂と二日酔い?
   惰性の歩きで馬力がでないでいる。汗は出そうででず.風に体温は奪われてゆく。
   西上州と信州との境界尾根.1158m地点のコブを越え.その先のコブを右から廻り込むと頂と兜岩から西に延びる山々の展望が開かれた。

    絶壁と緩斜面の尾根経を行く
   右側は荒船山北部の絶壁が連なる
    下山時の逆撮り

     尾根の北側の西牧川本流源流側はガレに絶壁.奇岩が立つ急斜面が続き南面の緩斜面側に山道が造られていた。
   南東から東へ折れるとガレた巻き道にでる。痩せ尾根になり木々の間から神津牧場のなだらかな山波が眺められている。

     その先で浅間山が広い裾野を抱き雄大な姿が望まれた。続く上信国境は龍ノ登山から白根山.遠く苗場山まで連なっをり
   その中.一段と大きな姿が四阿山だった。

     1本目で雑木に囲まれた小さな窪みの沢にでる。一杯水の流心は舐めるようツルツルに氷付き山陰の急登になる。
   冷たい風が吹き上げて山肌から漏れ垂れる雫は氷付き.ツララが創られている。地表はテカテカの氷床を見せていた。
   昔雨乞いの際のご神水として使われていたらしい。飲料の場合は普通の状態でも汲み辛く.水は下から持参し方がよさそうだ。

     緩い登りになるも力が入らず足は重い。3人で喘ぎ登る姿は余り仕舞ったものではなかった。
   滑り易い鎖場に氷がはび付いている。ここを越えれば疎らに雪残るトモ岩にでる。

     溶岩台地の北側端
   トモ岩上に立ち.10:31

    荒船山
     約200mの岩壁が垂直に抉り落ちるトモ岩は荒船山の頂上部の最北側にあり.南北に約2km.東西に400mの平坦な頂を築いている。
   その荒船山の細長い頂の末端に立つ。昨日は鹿岳の頂から.この溶岩台地の真っ平らな頂の両端を見詰め.その大きさに改め驚き見詰めていた。

    絶壁の展望台
   トモ岩から覗き込む荒船山の山陰が浮かぶ.10:29                            

   経塚山から戻り再びトモ岩から見下ろす.12:02

    トモ岩
     傾斜が緩み笹の尾根が扇状に広がりだすと.そこはもう頂北端の台地だった。
   北側が広く開け,切れ落ちるトモ岩のヘチにでて.初めてその大展望を知ることになる。鋭く落ちる崖に.K先輩から「行き過ぎるな!」と注意の声が掛かる。

     足がすくみ,立木を支えに摺り進む。前に足を摺り合わせ恐る恐る覗き込んだ。下から見た絶壁の真上にいた。
   真下は覗めぬほど抉れハング気味に切れ落ちている。そこは荒船山の溶岩台地の片隅に立ったことを意味していた。

     トモ岩の展望台からは遠くの山々が見渡される。正面の浅間山は優雅な裾野を促し.上信越国境の山々を連らねている。
   眼下には山内牧場・神津牧場に先程綴ってきた街道がジグザグに山肌に食い込むよう刻まれ.箱庭的な絵のよう描かれていた。
   又日当たりのよい谷間は荒船山の山陰が航空母艦のような大きな陰を描き見下ろされている。

    軽井沢.上信越方面
  
    トモ岩は凄絶な形相を見せる荒船山北面の大岸壁より眼下から広がる山間風景を望む

     手前左上に登るのが内山峠への林道. その先山上の開けた台地が神津牧場.左立木の間.手前が熊倉峰.後が物見山。
   遠望は霞む籠ノ登山.右小枝に重なる黒斑山. 雪雲被る浅間山. 右に回り本白根山と1つに見える横手山. 右の枝手が岩菅山になろう。

    佐久寄りの裾野
   上部は県境越えの佐久.小諸流域.10:32
    灌木とカヤトの溶岩台地を南下





  
  最近の熊爪跡.先にも爪痕がある.10:34
 
 風がなければ絶好の散策路
     トモ岩の上部の笹原に古い荒れ気味だがまだ確りした茶屋が建ち,トイレと休み場が一体となっている。
   その先で「枯木の分れ」という分岐に達すると相沢集落へ下る雑木の美しい登山道がを左に分けている。三ッ瀬まで下ると下仁田へのバスがある。

     細長く幅広い荒船山頂を端から端まで歩む。雑木と笹原の至って平坦な道を南方に向かえば最南端の経塚山にでられた。
   笹原の散策的な信濃路自然歩道. 灌木樹林の層が厚く.眺望は望めぬが森の中は明るい笹の原が続く。頂でもここだけは風が弱かった。

     冬木と笹原の平坦地は広葉樹と笹原の気持ちよい小径が綴られている。そして広大な平頂を歩いていると云う気持ちを忘れさせていた。
   丁度中間地点が窪地となり.東側にやや傾いている場所にでる。氷下に水がチョロチロ流れ木橋を渡っているのには驚かされた。それほど頂の幅も広い。

     テーブルマウンテンの最高峰.荒船山(経塚山)
     疎らに雪残る.11:11
    群馬県と長野県の県境に位置し.経塚山の山頂には2等三角点標石がある。基準点は「荒船山」.
    頂の周りは.見た目より灌木で視界は閉ざされている

     疎らな新雪の中を歩み.雑木に落葉松が混ざりだすと経塚山の取付き地点にでる。
   兜岩山や荒船不動尊へ繋がる星尾峠へと経塚山を回り込む分岐になっていた。尾根上を経塚山(京塚山)へ空身でピストンした。

     ここからの小山は急に傾斜が増し.凍る山肌へ取付く雪線にもなっている。
   滑ること,滑ること.登りより下りの方が辛かった。雨に注意とあるがテカテカに氷付く所があれば新雪も氷付く。

    経塚山
     荒船山の一角.最高点の頂点に立つ。視界は雑木林に遮られ.東から南,西にかけては明るく開かれるが展望はあるようでなかった。
   中央に標柱と石祠が祀られ.道中の2つの石塔と合わせて.新年を迎える御幣の紙垂が真新しく飾り直されている。

     師走も26日になる。もうすっかり正月の準備ができているのを見ると清々しい気分になった。
   紙垂(しで)とは電光.稲妻をイメージし邪悪を追い払い.落雷があると稲が育ち.豊作になると云う願いが込められている。

     強風は治まることもなく吹き付けている。ただ頂の先一角だけは風を閉ざしていた。風が治まれば暖かく陽差しにぬくむ陽。
   不思議な場所だが風が通れば陽差しがあっても肌寒い。まして陽陰は凍り付き震えが起きている。

     頂から右前方に下ると樹林の中に小さな峠.星尾峠がある。ただ上州側も信州側も殆ど眺めらしい眺めはない。
   星尾峠からの上州側は立岩を巻き南へ下って星尾の集落を経れば羽沢に路線バスがでてをり下仁田にでられる。ただ毛無岩へは荒廃している。
   又信州側は荒船不動尊経由(家族向き)で内山街道の黒田からバスで小海線中込駅にでられた。線ケ滝へは単調な樹林帯

    笹原の中央台地を戻る
   陽溜りの頂道.11:39

     頂からの展望はなかった。増して佐久側は期待をよそに灌木の冬木が絡み合っている。
   氷表をガリガリ割り経塚山入口に戻る。氷の響きのよい音色の出る所は楽だが一旦割れぬとそのひっぺ返しが戻ってきた。
   滑ること滑ること。立木の枝々を掴み下ることになる。

   再び戻ったトモ岩で.11:53

    浅間山〜湯ノ丸山方面が望めだす
   白く見えるのは神津牧場.12:03

   浅間山の遠望
   上信越連峰最南端の浅間山

    突起は経塚山
   昼食場所から南面の荒船山山頂台地.12:29

    昼食
     今日も昼食は風を考慮して時間が延び延びになっている。トモ岩では早過ぎ空腹感はなかった。風は今日も常に叫びうね続けている。
   この時期上州本来のカラ風だろう。枝々は弓なりになり孤を描き揺れ動く.頂に立ち戻るも適当な休む場所が見つからなかった。
   再びトモ岩に戻り.山道がガレで崩壊し巻き込むと窪んだ斜面に適地を見い出した。登りで見た通行止のガラ場のロープを潜った地点になる。

     道中3人で考えた案は直ぐ近くに下れば西下仁田温泉「荒船の湯」がある。そこで湯舟に浸かりラーメンとビールを頂こうと。
   そのため今日の食材.おでんはお土産に持ち帰ることにして.餅を放り込んだ懐中しるこを作ることにした。

     後からみると間食用に持参したしるこは食事の炊事時間とそれほど変わらなかった。気分的には早いが林檎を齧りながら湯が湧くのを待つ。
   何時もと異なり妻が懐中しるこを買ってきた。それを持参し美味いと喜ぶ友に自分ながら嬉しさが湧きだしている。

   内山峠手前で北面の足元から望むトモ岩の壁.12:12

    壮大な頂
   信州街道合流地点から荒船山北面の大岩壁を仰ぐ.13:45

    師走の西上州
     山間やその谷間にへばり付く山里はカラ風の到来を受け冬の兆しを受け始めている。この2日間.雪風が音を立て巻き下りてきた。
   手はかじかみ.一口の冷たい水は美味いが鼻水は垂れ.霜柱は午後になっても氷付いている。

     今年初めての強い寒波で唇が乾きカサカサにさせ.リップクリームの必要性を感じる季節がきた。
   又今回は風の遮る場所が少なく.昼食を摂る場所にも苦労している。ツエルトがあれば便利だっただろう。

     入山からの急登を終え,山の頂や奇峰に立った上から覗き込む谷間の集落は朝からの明るい日差しをまだ浴びていた。
   その陽も午後になると陽射しは弱まり.以外と早い斜陽した日差しを受けている。長く傾いた日差しは早くも谷間に山蔭を生んでいた。
   集落は次第に陽光から遠ざけられる。仰げばまだ澄んだ紺碧の空が広がりを見せていた。その大空の隅には筋雲が1つ.2つ見付けられていた。

     山蔭の接線が谷間からドンドン昇りだしている。集落の中には既に全く陽を閉ざされた山里も見られるようなった。
   そこは陰と云うより黄昏だした薄暗い陰になり掛けていた。

     1つの谷間でも違った規模や地形の異なりから日の陰り方も異なり.山里に幾つも陰を創り出している。何度もその谷間の様子を見下ろしながら下った。
   そこには私が想像していた西上州の山形や山村の風景があり,又改めて学ぶ山里の厳しさを悟らされている。手作りの猪棚の小さ畑を幾つも見て
   .長い煙突がある家屋が見下ろされていた。コンニャクの工場だろう。我々はその山里へ下りる。上州の空っ風がその上を吹き抜けていた。

    市野萱の集落
   「荒船の湯」から市野. 左が内山峠.14:49
    下山アプローチ
      13:35内山峠:40=14:25西下仁田温泉「荒船の湯」:45 =道の駅「下仁田」=吉井IC=鶴ヶ島IC¥950
      =17:25若葉:41=18:25池袋.248km.

     「荒船の湯」でひと悶着する。T先輩が軽井沢に住むT君から「荒船の湯」の真向かいにある食堂「くるまや」が.コンニャクと蕎麦が安く美味いと聞き,
   入浴後出向いてみた。アルコールが呑めぬのを嫌い.我慢できず再び「荒船の湯」戻る有様。

     戻った食堂で今度は計算違いか? 湯客ともめている。Sはコーヒーが不味いと嘆き.ラーメンも今一だった。
   湯船はよかったが食事との歯車は噛み合わず.共に何かがずれていた。

     全てを終え帰路へ。久し振り道の駅「下仁田」で正月の野菜を買い出し.白菜に下仁田ネギ.コンニャクと。
   ただ高速道の乗り違いが吉井ICからになり.最後にも落ちが付いた。高速道からは去りゆく荒船山の台形山頂が改めて雄大に望められた。
   ・・山と高原地図10「西上州.妙義山.荒船山」.

     12.25. 下高原から鹿岳.四ッ又山
     12.26. 内山峠から木枯らし唸る荒船山ピストン=吉井IC