| 春期ツァー合宿Top . 風雪の吾妻東北部.惣八郎平ツァー 疑似好天と野宿 スキー板をスコップに替え野宿 上野駅各本線は全線不通 雪に苦しめられ雪に助けられる 福島市内,信夫山より吾妻連峰 |
| 風雪の旅.吾妻惣八郎平をさ迷う s46年(1971年)03月06〜08日 L松村進(43)m見城寿雄(41) さ迷う惣八郎平へ 上野駅ホームで上越線の列車に乗る筈が奥羽本線の列車が目に止まり.急遽その列車に飛び込む。 今.五色温泉では現役が春合宿を行っている。そのツァーに顔を出そうと見城先輩とよからぬ考えを起していた。 福島から信夫高湯「ひげの湯」に寄り.家形ヒュッテへ。そして現役と顔を合わせる。 それだけの山行だった。それが野宿と云うよからぬ展開を観るようななった。 3月06日. 上野.奥羽本線= 7日.晴後吹雪 福島=高湯(ヒゲノ湯)一賽ノ河原b 信夫高湯 高湯で「ひげの湯」に寄る。朝食をご馳走になり.無理しないよう言われ宿をでる。 リフトを最後まで繋ぎ.ヒバの樹氷を抜け等高線に沿って鹿平山の北斜面を巻き込むと延び延びとした雪原が現れる。 樹氷の森を抜い真直ぐ進んで来ただけに.一時の日差しは周りに明るさを増さしていた。 今朝.積もったばかりの新雪を切る。テールが雪面を分け雪溝を作って行く。重い新雪が眩き輝いていた。 ベタ雪の方が却って良さそうな湿雪は以外と重く感じさせられていた。 膝を曲げる都度,直登の斜面は高度を上げるがテールは少し深めに沈み.少し後戻りさせられた。 僕はこの登行で足慣らしもないうちに.足は重く既にもう棒になり掛けていた。 膝が崩れそうになると憎たらしい春雪がその隙間を見て笑い焦げているようだった。 意識すればするほどに庇う膝に力が加わり.後ずさえさせていた。 五色への日帰りは強引かも知れないが自信はあり.それだけの経験は積んできた積りである。 だが時期が悪かった。2つ玉低気圧に挟まれ前3日間は猛吹雪。今朝は蒼空が望め期待を秘めるも疑似好天になり後が続かなかった。 冬型に戻り益々荒れ.シンシンと降る深雪と風雪に阻まれる。行動は鈍り.こちらは最初から分がなかった。 それでも良き友を得.気は揚々と雪の斜面を切っている。 失われたツァールート・・高湯〜赤岩間 |
, 吾妻拡大図左上五色.×は野宿地点 |
| 高湯の森 裾のような台地状雪原から蟹沢源流の潤葉樹林へと入り込む。 ざわめきだした枝木を揺さぶる風は遠のき.静まり返ったタンネの森は小川の瀬々らぎのような響きを伝えている。 森は冬の厳しい姿を現わすどころか.ありふれた裏山に見られるような枯れ山に.そっと雪を乗せたような温もりがまだ残されている。 ただ違いは重く積った雪と長くは持たない午後の静けさだった。 五色断念 次第に狂い出した樹林に森はざわめき出し.樹冠に風が唸りを上げ吹きさらい.何時の間にか陽は閉ざされる。 雪を半端被った樹葉は陰み.灰色の雪雲がどんどん追ってきた。山陰の森に早くも黄昏が忍び込む。 疑似好天に山は荒れだした。 迷う 15時緑樹山荘を前に.迷い賽ノ河原への下降を決意する。 幾らか薄らいた感じの薄暗い樹林帯を低い方.低い方へと尾根とは云わず,谷をも下りだす。 深雪で滑るより歩む下りが暫し続いた。 吹き溜まりに突っ込んでは谷縁を登り.尾根へと巻き込むが自分の立って居る場所さえ分からなくなる。 放浪は北へ向かうトラバースがやけに長い所にでた。 後に思えば尾根の側面を馬鹿真面目に横切っていたらしい。 ここまでの下りで谷間に閉口し.尾根への諦めが捨て切れず.潅木混じりの喬木林を強引に押し進んでいる。 幾らか起伏する淡雪や深雪に身は悶え.体力と時間を費やす割に行動は殆ど捗らなかった。 下りの終りのない尾根上のトラバースが続く。 風はもう途切れることがなく唸り叫ぶ。黄昏は瞬く間に過ぎてゆき.仄かな雪の明かりが迫りだす。 霞みは視界を狭め雪が舞い始めていた。 小雪原状の河原を抜けた所で雪の重みで沈殿気味の古い吊橋を見出した。 雪の割れ目から響いてくる沢音を覗き込むと流れに如何にも呑まれそうだった。 吊橋で一瞬.安心するも先は更なる未知が続いている。そして周りは全て灰色の雪原に埋め尽くされる。 野宿 右岸をガレに阻まれ惣八郎雪原に出れば何とかなると云う望みも失われた。 万事休す。半端.棒立ちになるが気持は落ち着きを持っていた。食糧はなくピンチ食もない.野宿を決意する。 |
雪の樹海 |
| 雪穴 スキーをスコップ変わりに雪穴を掘り終えた頃.日はとっぷり暮れていた。 時は17時を回っている。 二人が漸く寝じり込めるだけの狭い雪穴は雪洞と云うものでなく.即席その間々の安易な掘りだった。 積雪の多そうな所を上から掘ってだけの縦穴である。屋根にはビニールが飛ばぬようスキーを載せている。 早寝 膝を腹に付け背を丸め,首を持たれる格好だ。狭過ぎるが時間がなかった。 前三方は雪層の冷たい感触がはび込んでいる。互いにヒザを入れ.交差の姿勢で座り.じっと構える姿勢でいた。 靴下を替えうつらうつら眠った4.50分.もう寒気で起こさせられる。 寝られぬ寒さが来る前に少しでも寝ようと.穴に入り直ぐ寝込んだが.目覚めも早かった。 まだ宵の口以前だった。これからは寝ることもできない。 口に入れたのはザックに残っていた板チョコ半枚と一握りの菓子.互いに分け合い.長い夜が始まる。 ライター 不自由な格好でセーターの袖に手を突っ込んで.シャツの右ポケットを探るとタバコの底にライターがある。 擦るとプッシュと鈍き音を立て.黄淡色の炎が手元を明からめる。真向かいの見城さんの顔がぼんやり映し出された。 顔は偶像的な曲線を描き.近過ぎるせいか.おぼろに見える。 外は吹雪き唸り始めていた。 屋根にしたスキーの隙間から雪屑と共に風が忍び込んでいる。 長い夜 一瞬忘れる寒さに時計の針はまだ8時2.3分を指していた。 「8時か!」と溜め息にならぬ言葉を吐き.ライターのフタを閉めると又,闇に埋め尽くされた。 冷酷な寒さがドット溢れ入り込んでくる。「まだ8時か!」独りことのよう.うなずく見城さん。 そして途絶えがちの言葉に沈黙の重みが増してきた。 外とを隔てたビニールはハタハタ揺らめき.外の荒れ狂う雪嵐から守っている。 9時.10時.11時.12時.規則正しい間隔でライターの炎は燃え.腕時計に指す針を示している。 その都度.一瞬の明るさが芽ばえ.明るさに暖かみを覚えるも.一瞬に又,闇へと逆戻りする。 オイルの量が分からない為.長く使えなかった。時計を見ては消すようなる。 暗くなると何とも云えぬ冷たさが僕の身に迫り.早く夜が明けぬかと気はもだえていた。 0時までは.まだ夜の内と窮屈な身を押さえているが1時を過ぎると急に身がもだえ.体の不自由さが気に掛かりだす。 両足を叩き体をくねらせ寒気から逃れようと不自由な膝さえ動かした。意識せず動く膝.気にすれば尚更動きは酷くなる。 動かぬ形を少しでも伸び縮みさせようと無意識に近い動作を繰り返していた。 屋根にしたスキーの重みが次第に空間を狭め.身は更に丸め込み.動きは更に小さくなる。 そして雪層の壁に当ってはまた身を鞠のよう小さくさせていた。 雪中の炎 2時.やはり夜明け近くなると冷え込みが増してきた。 尻に敷いていた雑誌を取り出し.1枚々ページを破いては,細かく巻き上げ炎を点す。 それ程高い炎ではないのに屋根のビニール届きそうになり.周りを一瞬明らめ先輩の顔を浮きだした。 ほのかな暖かさが炎を見て惨めになるよう思われた。 炎は極一部分の空間を暖める。 筒状に昇った暖気が屋根板変わりのスキー板の間を抜って雪の雫を落とさせている。 雑誌の何ページかが燃え.その上の淡雪が雫となって落ちた。 目には見えぬ筒の空間は雫の雨が増してくる。この現象も紙をくべぬと又全てが闇に閉され.雫は炎と共に凍結した。 明るさを失うと咄嗟に氷つく雫。2度目に気が付いた。 外の河原には相変わらず山越えの勇ましい列風が我がもの顔に吹き込んでいる。 コンロもローソクさえない.ライター1個の侘しい野宿に山は叫び狂っている。 高湯スキー場〜ビバーク地点3月08日曇後晴 bs〜惣八郎平〜赤岩 おぼろに明ける朝 夜が明け風と雪が治まる。静かだ。荒れていたせいか無音のような静かさ。微かに詠み返った明るさに這い出るよう外へでる。 穴の闇から外は明るかった。普段ではまだ闇の中だが凄く明るく感じた。 もはや夜が明けたと思うと同時.明け方の兆候を肌で感じ私に付いてきた。 白味が黴かに増し.次第に朝の明るさが戻ってきた。そして不思議に私にもエネルギーが蓄えられていた。 朝の日が私達に生命力を与えてくれている。 広々した空間に足.腰は否や体そのものが1つの鉛のように固まっている。 足は棒となり腰は老人のよう深く屈れ.暫らくはその間々の姿勢で如何することもできなかった。 まるでピノキオがカッケになった姿だろう。 |
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| 再び下る 岩肌の頭上を横切り蟹沢の河原を下って.左手の起隆した丘に乗り滑る。 疎らな潅木に体を縫い.堰提右岸から右へ大きくカーブを描くと又.堰提にでた。 右岸に築かれた林道は長い尾根沿いの径。雪径と云っても,殆ど径らしいくなかったが。 径らしき所を探るが相変わらず重く湿った積雪が歩みを遅らせペースが上がらない。 果てとなく続く雪径に枝尾根は広がり.下らぬ平坦な裾で牧場らしき牧柵が現れる。人工物を見付けてホッとした。 食物はビール1缶のみ 起き続けての30時間が過ぎ.鈍りがちな重い頭をかかげ直接.惣八郎雪原へと流れ込む。 稼げぬ林道に牧場を東へ々と曲がりだし.樹氷の谷間へ突っ込む。 駄々広い雪の原を斜面に任せストックを漕ぎながら下る。右丘に電線が現れた。 電柱の下には道がある。ただ電線沿いに道があると知るのみだが。 電線を脳裏から消すと道は見当たらなかった。一面に広がる雪原だけが広がっている。 まだ安住できないが心は弾んだ。幾らか視野が広がり明るくなる。 喉が乾きビールを呑む。ザックに1本だけビール缶が入っている。 見城さんは要らぬと拒んだ。もう先は分かってきた。安心感が又ビールの旨みをも造っている。 起伏はなだらかになりつつある。私はその広い雪原を望み一気に呑んだ。 群がる起伏に下へ斜面に救いを求め.地形が呑み込めぬ間々.東へ々と天戸川源流をさ迷いだす。 目指す方角は知るものの地形が分からず.流水に沿い下るのみ。 雪の樹海陽差し かなり下ってから咄嗟の判断で横尾根を横断 いやな横バイの末.源流から下っただけの高度を勝ち取った。 尾根上の緩やかな起伏は見事な杉の林になっていた。 深く垂れ込んだ雪雲が切れ.漏れ始めた陽光が林を照らしだす。 陽光の一線が2人の所まで降りてきた。それは見る間に周りに輪を掛け広がりだしている。 樹枝を被う新雪は弾けるような輝く白さを生み.キラキラ煌き輝きだした。 ビバーク地点〜赤岩駅山を抜ける 松川 空腹も疲労も皆すっかり忘れ.何か叫ばずには居られない感動を感じていた。 雪帽子を被った木々の梢を.探り抜けると最後の送電線にでた。 丘の下.松川の窪み.対岸に奥羽本線の線路が望まれる。 絶えることのない淡深雪を漕ぎ.下り気味に松川を渡渉する。スキーを付けた間々.ゴーロ状の浅場を縫い渡る。 板がクッションとなり.登山靴は半分程の潜りで助かっている。川面は煌き.浮き石に積もる雪が眩しい。 線路の崖淵を一歩々攀じるよう登り詰めた。最後の馬力と踏ん張る。 新雪が軌道を被い.冷たく黒光りするレールが2本.目の前に現われた。 線路 松川を渡りスキーを外す。 川に浸かり重くなった板に足は綿のよう軽くなり.体全体を浮び上らしていた。 一歩.踏み込んだ線路に感動が走り.心が踊る。安堵と云うより安らぎに満ちていた。 レールの流れが雪面から顔を出し.赤岩の駅へと僕等を導いている。 トンネルの坑内に入るまではよかったが音もなく現れた上りの蒸気機関車に慌てて抜け出だした。 雪に吸収されて列車の騒音は0。気が付かず突然列車が全面を被い姿を現れた。 近ずけばけたたましい轟音を撒き散らし.雪煙を巻き上げ私の脇を過ぎ去った。 突然の恐ろしさに後のトンネルが怖くなる。 雪面の機軸に膝間付きレールに耳を当て.車輪の響きを聞くも何も伝わって来なかった。ただ冷たい鉄の感触のみ味わう。 赤岩駅 小さなトンネルを2つ潜ると赤岩の構内が現われる。 昨夜不通だったと云う奥羽本線には20人近い人夫がポイント付近を除雪していた。 先程の上り列車は峠越え全線が不通の為の試運転だそうだ。小さな小さな赤岩の駅に着いた。 駅員の差し出してくれたお茶の何と温かく旨いこと。目の前にストーブが真っ赤に焼けていた。 福島駅で各々2食分の弁当を買い込む, 後は終着上野駅で駅員に起こされるまで.二人共ぐっすり眠り込んだ。 今年の春合宿(cL中沢).最後の家形山パーティに合流する積もりで登っていた。 後から思えば.鈴木を頭に大橋,西戸.西沢.新崎.斎藤.吉水.島田.伊藤の大所帯に.OBの日吉先輩もいた。 森で方向を見失い五色を諦めざる得なかった。合宿に顔を出す楽しみが野宿と消えている。 遭難騒ぎ 帰京後.遭難騒ぎに驚く。 谷川に行く予定が上野駅で急遽.現役に会おうと春合宿.五色に変更し.高湯へ向かっていた。 それ故.谷川岳には入山届がなく。見城氏の勤め先で大騒ぎになる。 我が家ではニースで東北,上越方面の列車は豪雪の為.全面不通を聞き安心していたようだ。 兎も角.反省一言に尽きる。 結論を言えば切りがない。ツエルトと少々の食糧があれば云うことはなかった。 ただ今回はローソク1本だけの持参でも.違った世界を味わっただろう。 幕営の時は何でも持参するのに。最後まで焦ることはなかったが.2人とも馬鹿の一言に尽きた。 その後.ビニロンツエルトを購入した。 吾妻連峰東北部地形図.山行表 山の経歴.経過Top |