北八ヶ岳地形図.山行表       北八.雪の森と湖概念図

43年正月.北八ケ岳の森と湖


トラックと借りた冬天幕は使わず背負う

自らラッセルし雪積る湖を幾つも繋ぐ
誰も居ず静寂に満ちた雪片とワッパの世界

                雪に埋もれる北八の森と岳  .

  ,      天狗岳より北八の蓼科の森
            北八ヶ岳.雪に被われた森と湖の世界
                 s43年(1968年)01月04〜10日.L松村進.sL大川崇夫(3)m関根利章.沼津久美子.豊永真琴(1)


      昨年の初春,新人養成合宿の偵察で北八ケ岳に入山.その時の良さを忘れられず再び訪れる。
        メンバーは当時共にして共鳴した大川と後輩達になる。
        静寂に満ちた森と湖氷を幾つも横切り.人多い正月をずらしてワッパの世界に入る。


       稲子湯―白駒池―麦草峠―雨池―双子池―亀甲池―親湯
1月04日
5日
6日
7日
8日
9日
10日
上野=小諸=松原湖=稲子湯c
c1―白駒池h
c2⇔停滞.ワッパ訓練
c3―雨池hc
c4―双子池h
c5―亀甲池―親湯=茅野
  =新宿

              松原湖=稲子湯c1
                    白駒林道より硫黄岳と天狗岳      .
       1月04日曇. 松原湖=稲子湯
          上野.信越本線8:30急行「第一妙高」=小諸.小海線=13:36松原湖15:10ト=15:45稲子湯c1・・消燈21:00.

   正月の昼下がり車窓いっぱいに柔らかい陽差しを浴び.小諸で乗り換えゆっくり小海線を南下した。
     松原湖駅は千曲川左岸の河畔にへばり付くようある。昨年春.小雪の舞う中.黄昏時期に松原湖駅に大川と降りている。
     寒過ぎ駅事務所で暖を取らして頂き.列車を待つ間に出舞したラーメンのご馳走をも受けた懐かしい駅だった。

      稲子湯へ
   乗合バスが途中までしか入らないことを現地で知り.慌てて稲子湯までトラックをチャーターする。車が入れると聞き.居酒屋の主人に\1500で手配して頂いた。
     山麓に被う積雪は昨年二度の降雪で例年より多いとのこと。途中でチェーンを巻いている。
     走る荷台に寄り掛かると粉雪が舞ってきた。乗り心地はちょっと寒いが冬山入山に相応して嬉しかった。正月の山に浸る素晴らしさをも創り出している。

   松原湖南岸を回り込み大月川沿いに樹林帯を抜けると広い河原が現れ.斑な雪と共に硫黄の黄色い山肌が見え隠れしていた。
     体に当る風は冷たいが陽差しは暖かった。天気雪も直ぐ治まり.強い陽差しを受けての乾き切った林道を遡る。
     雪不足の不安も遠のき.前方に白く煌く天狗岳の峰々を望むとホッとした。先には雲1つない紺碧の空が広がり.我々を迎い入れてくれていた。

   キャンプサイドは宿主の好意で稲子湯別館前に設けさせて頂いた。
     玄関前の広場.客が少ないのか? 居ないのか? 玄関を塞いでもよいと。 宿主に無言で感謝する。

   冬用天幕はワンゲルOBのものを借用.3人用に5人と少し狭いが.物を外に置き換えれば工夫しだいでどうにもなる。
     狭さにも考えると理屈では次第に暖かさを増し.寝心地は以外とよかった。
ただ.後で思うも何故.風呂に浸からなかったのか?
     日本最高地点の湯である。悔やむが入山日で頭の片隅にも残っていなかった。残念この上もない。


   稲子湯―白駒池h2
  ニュウ付近からの北八ケ岳

   稲子湯からニュウへの森.2007.10

     1月05日.晴後曇 稲子湯―白駒池
       稲子湯c1. 8:45一9:35林道:50一10:35白樺尾根取付,笹の中10:57一11:50大12:35一13:20小:35一14:20小:30一15:10分岐
       一15:20小:30一16:15小:20一17:20白駒池「白駒ヒュッテ」h1.2
      入山
   女子30k弱のかなり重い荷を背負い稲子湯をでる。出掛けに宿主からお茶のご馳走になった。
     ルートは白樺尾根より白駒池へ。積雪30cmほど.重荷に体が慣れないせいか初めからペースは鈍っている。

   明るい冬の陽差しが硫黄の岩壁に映り.澄み切った空に乾いた山気が快い。
     石楠花尾根を横切って.林道のうねりに合わせ笹の中を.白樺尾根に取り付く。
     足元の熊笹に薄っすら雪片が被り.濃紺の空には白樺林が若枝の如く勢いよく伸びている。

    白樺尾根.ニュー分岐手前で勇ましい一年女子部員

      入山疲労
   40分ペースの登りは雪多く意外と捗らなかった。一時は今日の白駒池入りも危ぶまれていた。
     尾根上にでて一本.オ‐バーズボンを着用する。どんより雪雲が覆いだし.足元の積雪被る雪道に深みが増してきた。荷を充分考慮すれば最適のコースだが。

   日陰に入り気温は下がるも,出る汗は快い。ザックザックと雪表を割り潰す足音が気持ちよく聞こえ.漸く入山の兆しをも感じるようなる。
     樹間から漏れ溢れる陽差しに陽が踊り.高度を上げるに連れ.積雪は深さを増している。
     トレースの半ば凍り付いた淡く締る雪塊りが山腹を綴ると雪溝らしくなた。一年生の苦労が目に見えてきたが.もう一日過ぎれば当たり前の余裕が現れるだろう。

   膝ほどの積雪はラッセルともいえず.最適な歩みで一本のトレースが刻まれてゆく。
     一年生にとっては湿雪に喘ぎ.氷化ではコロコロ転び.かなり疲労が出始めていた。

   積雪は増してきた。一度見止めた夏径も.積もる雪に失われ窪みさえ分からなくなっている。
     右に折れれば北側になり.愛知大ヒュッテを足元に見下ろしている。そして何本目かで漸くニュー分岐にでた。

   一年生.特に女子の疲労が甚だしい。15時を過ぎてしまったが後は下り一方になる。
     顕著の尾根もなく雪の被われた森.雪白く敷き占められた森が更に先へと広がっている。


    , 白樺尾根を
      夕暮れの森
   森に黄昏が迫り,森を潤す樹林に陰が忍び込んでくる。
     純白だった雪.面も灰色の帳に塗り変えられ.兎も野鳥のさえずりも影を潜めてしまったようだ。
     そして木影は薄暗くなると共に獣の姿に変え.森を支配し始めている。静かだ。雪の軋む音だけが聞こえ.息だげが激しく鼓動した。

   見知らぬ森に一本のトレースを築き頑張る僕等。
     森が切れ湖水が現れた時.日が頂稜を越え西の麓に落ちた。陰る日に僕等は無言の間々.白駒荘へと向って歩む。

      白駒荘
   根の大きく這った小径.その上を包む積雪に足が捕らえがちになる。尾根上のトレースから.ここは穏やかに雪被る森が続いていた。
     そして森に埋まる白駒池.その西岸の灯りに.池畔の白駒荘を見い出した。

   白駒荘は辰野旅館の老夫婦が管理し.他の山小屋のような若さの雰囲気はない。池畔の静かな宿を好む僕等には向いている。
     老夫婦の暖かいもてなしを受ける。

   ストーブ.コタツ.ランプと使い放題で.宿代1人¥650を素泊り¥150に.負けに負けさせて頂いた。テントを背負ってきたが小屋泊り.如何に転んでも贅沢かも。
     明日は停滞にしてカンジキを付け.小屋の裏山を歩く積りでいる。


           白駒池.停滞h3
          , 雪に被われた樹林帯
         1月06日.雪 白駒池.停滞
             ワッパ訓練.山荘h2. 11:40⇔13:15(引き返す)一14:05.
      白駒の森
   白駒池周辺は以前聞いた話として.池の周りは特に黒木が茂り.極相をしめす樹林に囲まれてる。
     陽の差し込む大地に陽樹が茂り.陽樹はその育ちにつれて自ら群生し.後に日陰を作りだして再び陰樹に侵される。それを繰り返している。

   黒木の針葉樹林がそれに当たる。黒木は次第に日陰を広げ.針葉樹の混成林から針葉樹林に移ってゆく。
     そしてそれぞれが安定期に達するとそれを極相と呼んでいた。白駒池を中心とするうっそうとした樹林はこの極相が占めている。
     黒木の生い茂る森に小さな池があり.小さな白駒荘がある。そこに今日は宿っている。

   降りだした粉雪が森に落ちてくる。その中.ワッパ訓練にでる。
     麦草峠への径を選んだがトレースされている為.分岐を左に折れ.高見石へ向かい.南側へ倒木帯をトラバースした。

   白駒池辺りの無雪期は幾重にも重なり合った倒木の表面は苔がびっしり被い.密生した森の中を歩くも遠く見透すことができないほどだった。
     それが更に深い新雪に降り注がれた森になっている。倒木にも行くてを阻まれた。ラッセルは浅くて膝.悪くて腰少し下にまで没している。
     昨年は残雪の沈み込まぬ硬雪の秩父金峰山へと春先は通っていた。それにしても曲がりくねった森を縫い.トレースを頼りに雨池へ抜けていた。

   見た目にも深いがやらしいトラバースの倒木帯.落とし穴も多く.腕力の消耗が甚だしい。ワッパ訓練より体力消耗訓練になっていた。
     14時白駒荘に戻る。宿泊料¥150で僕等だけの宿を取ることにした。

      炊き込み御飯
   僕は炊事が好きである。合宿は別として個人山行では好く作るし洗いもする。
     況して団欒しながらの炊事は楽しい。今回は炊き込みに精をだす。鳥肉がなければ豚でもよい。山での肉は何でも喜ぶ。
     干し椎茸と油揚げを一枚持参した。野菜類は献立から少々分けてもらえば一品増えた。

   個人山行の僕の特長は具を少し多くすること味を薄くすることにある。主食は後輩が自慢しながら作っている。
     それを殺さず.ほんの一品足すだけだが。
     炊き込みにし醤油の焦げた匂いが飯盒から伝わってきた。食欲をそそる香りに全員が顔を現している。


    白駒池―雨池hc4
   白駒〜高見石.今日最初の一本

    1月07日.雪 白駒池―麦草峠―雨池
      白駒池h3. 8:40一9:20小:35一9:50麦草峠一10:20小:30一11:20小:40一12:40小:50一13:05雨池監視所hc4.

      白き雪と森
   一日の停滞で食欲が増し.全員元気にワッパにストックの完全装備で小屋をでる。
     昨日のトレースは消え.あわれるかのよう所々.ラッセル跡が残されていた。

   降雪も止み,ヤッケを脱いでひたすら雨池へ。メンバーは全員が調子に乗り.歩き方までもが別人のよう変わっている。
     森林の乱立気味な小径に淡雪が被い.足音を斬るような周りには今日も静寂さを漂わしている。ラッセルの軋む音が心地よく響く。


          雪被る樹冠の煌き
      陽射しの通る明るい森
   トレースはこの先でなくなっていた。樹林が幾らか開けた所で強い陽差し照らされた。
     樹林に漏れる陽が雪面に煌き眩き風もなく.シャツだけでも十分に行動できている。
     汗ばむ体に雪粒との触れ合いも心地よい。ラッセルも膝少し上を越し.程好い積雪がトップを掻き立てていた。

   皆,自分で踏み締める新雪に酔い踊っている。自らトップで歩むのを待っている。僕はラストから.その雰囲気を察知し交代を告げる。
     トレースの脇に避けるトップ。ザックごと雪積りの脇に背を向け.寝転べは雪粉が舞う。追う2番手が俺の番だと前に踏みだす。


        麦草峠手前の一本
             , 多い積雪に戯れる大地
   一本取る。
     全員が背負うザックの姿の間々.トレースを外すよう両脇の積る淡雪に体を投げだした。
     雪粉が舞い仰ぐ蒼空が樹冠の上を縫い広がっている。

   明るくのどかな雪の森.風は今日もない。雪面は煌めき.汗は休み冷え出すも贅沢な森の憩いがある。
     時間を忘れる日向の森, 焦らず.ゆっくり新雪積もる森を味わい.又ラッセルに励む。



                午後の霞を受け.雨池監視所へ
      雨池,与志合資会社監視所
   雨池を求め.赤布を求め.時折雪片の落ちる快い響きに触れ.ロマンチックな気分の中.雨池にでる。
     昨年新人養成偵察の時.望んだ蒼氷の雨池は雪深い雪原となり.僕等だけのオアシスを創りだしている。

   周り全てを独占し雪原にトレースを築き.再びお世話になる監視所へ。
     今日も他の登山者とすれ違う出会いはなかった。ここでもワッパはよく利いている。

   プレハブのやや広い監視所では昨年同様.釘をペグ変わりにし.小屋の中央にテントを張る。床板が何とも贅沢な心地よさを呼んでいた。
     今回の床板の上には何もなかった。机すらない。それをいいことに.雪中とは違い床板には荷の不必要なものが漠然と散らばった。


          雨池―双子池h5
         北横岳より樹氷
   1月08日晴後曇.一時小雪 雨池―双子池
      雨池hc4. 9:40一10:20伐木帯10:30一11:15小:30一12:05カラ沢分岐一12:20小:35一13:25小:35一14:10双子池h5
.

     北八の大地
           北八.雪の原生林
       森の中
   今日も森を抜け.雨池から双子池へと池のハシゴになる。雨池の東側を横切って東寄り.森林が切れた地点からコースを取っている。
     森を縫う小径は雪に埋もれ.時折樹間を通し木洩れ日が漏れてくる。煌く日の光が枝木に映り.袖やザックに触れる。
     その落ちる雪粒の感触が冷く快い。遊ぶには丁度よいラッセルが続き.トレースが築かれてゆく。小さな道標は殆ど確認できず。


                       落葉松林
       , カラ沢分岐より
        落葉松林
   以外となだらかなだったカラ沢源流. 昨日.一昨日と同様のピストン交代で進んできた。
     ラッセルは膝前後,奮闘すると云うより.トップは今日も歩む気を楽しんでいる。トッツプを交代する間も良くなってきた。
     径を開ける動作も堂に入ってきた。「トップ交代!」の言葉に反応し.勢いよく脇の雪積りに倒れ.笑って径を譲る仲間達は皆笑っている。

   急に整然と立ち並ぶカラ松林に出会う。ここから双子池の北東に掛けて黒木から落葉松林が多い。ここは植林されていた。
     落葉松林は低い山帯の樹林だが亜高山帯の高所に順応し.力たくましく育っている。手入れされた落葉松が蒼い空を切るよう伸びる。

      双子への径
   今回で夏,春,冬と通ったことになる双子池への径. 高校時代には激しい夕立に遭い.猛暑との噛み合わせで登っている。
     昨年は春雪の清々しく漂う新緑の残雪を踏みながら白樺平から石堂川を下っている。又その時とは裏腹に今は侘深い雪の重みに慕っている。
     同じコースの雪山でも.違った味わいがある雪に埋もれた別の森があり.真夏なら尚更違う雰囲気を漂わしていた。


           落葉松林の丘
      双子への径
      ワツパ
   カラ沢分岐からは湿雪がワッパをダンゴにした。
     特に僕は昨日.ワッパを壊し副木で修理し.かなり重くななり.履き心地は至極悪い。
     生木の副木で重みも倍近くなった。この間々無事ワッパを持って帰れば.かなりの骨董品になるかも。

   潅木混ざりの樹林帯を抜け,傾斜が落ちてくると落葉松峠.その向こうに双子の池がある。落葉松の植林帯で.かなり年数が立っていた。
     美林.直立不動に規則正しく立ち並ぶ。その間を透す空は蒼かった。又刻む込むトレースがその美を強調しているようだった。


        中山の大斜面
        賽ノ河原から
      タンネの森
   飽きることがない森が続いている。
     まだ他の登山者に会わないせいか.尚更北八の森の深めに羽間っていた。

   風雪や岩壁に挑む緊張感はまるっきりない北八の森。
     森との対話. それに積雪が加わり.更に森が山の深みを語りかけているようだった。何もせず座っているだけで絵になっている。


     男池前の双子池ヒュッテと我々のトレース

      双子池
   双子に駆け下り小屋前で小休止. 蒼空から小雪がちらほら舞いだした。天気雨ならぬ雪が小枝から落ちるよう舞ってきた。
     無人なら入る気持でいたが今年より常駐とのこと。茶の勧めに乗ったのが悪かった。

   昨年は金峰山から八ケ岳に新人養成が変わり交渉と合宿との2度訪れている。その上今年も春が来れば新人養成で厄介になる。
     会話中.暫し寂しいから泊れを繰り返す主人。冬天を持ち.負けずに断るも値引きが始まった。幾らなら泊るかと。

   後輩達は色目を使い耳を傾けていた。形だけの現金でよいと言い出す小屋の主。
     巧みな言葉に勝てず.個室¥200で交渉は成立した。入山日以来まだ外で幕営せず.今日も又真新しい小屋へ入り込む。

   欧州風のカラフフルな色彩が雪白き湖畔に溶け込み.小屋を御殿のように変え.湖畔の高みに浮きだされていた。
     純白の湖畔の森に.黄色い壁と赤い屋根は童話の世界を思わせる。今日も客は僕等だけだった。

   男池は雪原化している。踏み込むのが勿体無い程.白く輝き.その上.粉雪が舞いだしている。
     明るい森と湖.「お伽の国」のようだ。柔らかい陽光を浴び雪粒も跳ねている。妖精かも?


           双子池―親湯
           ,  朝方の双子池の湖上

     1月09日.快晴 双子池―亀甲池―親湯
        双子池h5. 10:35一11:25亀甲池12:10一12:50小13:10一13:45広河原分岐.天祥寺平一13:55小14:10
        一14:50小15:15一17:35親湯.諏訪バス=18:35茅野.
      双子池
   眩い陽差しを受け外にでる。目が眩みそうな双子池の雪原が広がっていた。
     その中.本来なら右側の湖畔に廻って植林帯の登山道を下るところ.一直線に雪原を刻み込む。快い深さのラッセルに一本のトレースが築かれて行く。

   今だ他の入山者にも会わず僕等だけのトレースを築き.稲子から綴ってきた。トップを歩く後輩に堂々と池の中央を進めと強調した。
     トレースがズレても真面目に歩めと臨んでいる訳でもない。ただ胸を張り自分の意志を通せと。

   今日はラッセル交代ではない。トップの心地良さを味わせる為.後輩を随時交代させている。
     後輩は自分で雪面を切るトレースに酔っている。交代を告げ僕の前に付く時.誰もが笑いの仕草を現していた。
     亀甲池もトレースはあるまい。僕等だけの贅沢な山があり.道が続く。

   植林帯の小尾根を横切り亀甲池へ

      背負子
   入山日.白駒池に至るまで.どう云うわけか冬天一式を私が背負うことになってしまった。それが雨池.双子と続き.今は亀甲池でも背負っている。
     リーダーの僕がである。最初の日だけで後輩に譲積りでいた。それが今日も背負っている。

   RWCから借用した冬天の手配が遅く.後輩に背負わせる積もりだったが.自分で背負うことになる。
     食糧は合宿と比べられぬ程,贅沢にした。量もあればカサもある。それ故灯油も多く持参し.3人の後輩が背負っている。

   同期大川は知らぬ顔を通しているが当然.後輩達は黙っていた。
     入山当日は良いと思っていた。その僕の善意を知る者は誰もいなかった。

   僕が潰れたら如何する積りか? 誰も考えていない。考えると損すると思っている。
     久し振りに担ごうかと云う考えが.自然と浸透してしまったようだ。背負子もまずかった。
     ここに全てを黙る大川がいた。悪い男が何時もいる。

   彼と昨年の春,この北八の森を偵察に訪れた時,真冬にまた来ることを考えていた。
     大川も同じよう考えていたようだ。冬の森と湖を気儘にトレースしようと。

   背負子の上.個人装備を含め荷は高く.倒木を潜るにも一苦労させられた。その都度,荷を外し越さねばならなかった。
     今日は荷を外すこともなく楽に亀甲池へでている。だが.それを気にする仲間はいなかった。


      亀甲池
   空は蒼いが足元は風が渦を巻き粉雪が陣を巻いていた。山に囲まれた小さな池.亀甲池に入り込む。
     雪粒が旋風に巻き上げられ霞む薄日の雪原に幻想的な陽差しが忍び込み漂っている。

   最後の池,亀甲池を抜ける。白駒池では新雪の中散策し.雨池では重い雪雲に被われ.重苦しい雰囲気が溢れていた。
     そして森を抜けた双子池では妖精に出会っている。更に山懐深く.隠れるようあった亀甲池。静寂に満ちた森を大川をトップに山を抜ける。


         亀甲池
              雪風が這い廻る湖上を横切る
      下山
   この上もない登山日和に恵まれ.のんびり歩いては休み.更に歩いてはを繰り返す。
     長閑で厳粛な岳. 下山で違う軟らかい裾野を望み.雪山の森と湖を肌を味わってきた。

   蓼科山を真向かいに望み天祥寺平へ

   冬の一時を晴れ渡る天と純白に煌く雪肌に触れてきた。濃紺に冴える雪煙.シュカブラの輝き.赤旗.赤布になぞられるラッセルの跡.
     赤.黄色.青のヤッケ.各々のオーバーズボンの動き.全てが雪景色に溶け合っている。

   ワッパで通した北八ヶ岳. 山と云うより静寂に満ちた森の世界を5人で覗き込んできた。
     森を縫い池を綴るも終わりに近ずいていた。亀甲池からも遠ざかり.右寄りに谷沿いを緩く下れば蓼科山の展望が大きく望まれた。

   陽を真面に受け仰ぐ岳. 森を抜けると河原の山腹は雪原状にでて.周りは明るく軽いラッセルになる。
     まだ擦れ違う人ともいず.トレースを自ら築き.雪と戯れ遊び.最後の裾野が待っている。

   小沢をトラバース気味に下山

   大河原の分岐.天祥寺平で左に曲がり.伐採跡の雪原を抜けて滝ノ湯川の右岸沿いを進んでいる。このコースにもトレースはなかった。
     右に今は雪原に思える河原歩きから蓼科山へ遡るコースを分けている。高校の初めに霧ケ峰からこのコースを通り茅野へ抜けている。
     今思うと母校が夏の甲子園に出場し.それを知った小屋番からカレーライスをご馳走して頂いていた。

  

               関根.豊永.沼津の一年生と私
      下山
   雪面からトウヒや熊笹が少し顔を出す急斜面を下ると街道にでて親湯バス停にでる。
     斜陽する陽を真向いに受けての下山。背には北八ヶ岳全体像が.黄金色に輝き雄大に広がりを見せていた。

   早い冬の洛陽に斜陽する眩い光が眩しく次第に落ちる陽。変わって焼き付けられたような深い紅色に変わっている。
     アーベンロードに染まり行く八ヶ岳連峰を仰ぎ.山を下る。
     山麓を覆う森も次第に翳り.最後のラッセルを踏みしめ心軽やかに山を下りた。


      メザシ
   茅野に降り.どんぶりを2杯も食べた女の子。下山しても皆すこぶる元気.食欲も大勢だった。
     駅舎の待合室,石炭を足し.赤々と燃えるストーブにメザシを直接乗せている。
     山でメザシが残ると待合室で食べるのが高校の時より慣例になっていた。今思えば冬から春.雪山の時に限られていたようだ。

   燻す煙は凄い。脂身を含んだメザシは煙を黙々と上げ.ひっそりした待合室をその匂いで満たしている。
     それを地元の人はこの時期.登山者が少ないせいか.微笑みで応じてくれていた。

   下山の安途と赤々に燃えるストーブ。コークスを加えながら.この動作に僕は常に酔っていたようだ。
     酒を呑むように。メダシの苦味が何とも云えぬ美味さをもたらしていた。


    1月10日.18:35茅野=4:26新宿
     
     大岳と双子池の1つ「男池」       同期大川と


     旧hp.PhotoHighwayJapan.北八冬の森と湖
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