朝方も食事に手が付けられず.念のため2度目の清水尾根を諦める。
  今回の下山は少しでもアルプスの頂稜に留まろうと急きょ白馬岳から縦走路を歩み.三国境を越え.小蓮華岳へ下り.栂池高原へ回り込む。
  慎重には慎重の上の行動を取らねばと考えた。下山コースの登山道ならば.何処でも途中下山で.緩やかな山稜が続いている。

   再び猿倉から大雪渓
   昔を想い白馬岳越えの小蓮華岳・・清水尾根を断念・流動食とブロッケン
   船越ノ頭から白馬大池を経て栂池ヒュッテ

   宿舎前テラスより.4:56
    日の出4:49.日の入19:00.若潮

    決断
     3時45分起床.雑談室で小屋の湯沸かしを利用させて頂いた。朝食を摂るが食欲は全く摂れず。入山前の軽い熱中症が仇になったようだ。
   今思えば昨日の登りで大汗を掻ぎ.欅平からの登りでは足がもつれていた。寝床で小さな指先の引き付けを幾度か起こしていた。初めてのこと。

     前日の昼食までは食欲はあった。ただ持参した好きなウィスキーは吞む気を失っている。何かが可笑しい。荷の食料は十分あるが如何したことか。
   在中していた昭和医大に相談すると軽い熱中症だろうとのこと。既に2食摂らず.高度差2200mを焦らず下れるだろうか?

     雑談室のテレビを点けると白馬岳は午前中晴.午後曇と絶好の登山日和を報じていた。窓越しに覗き込む空は明るく夜明けの兆しを示している。
   予報は当たり.今清水尾根を下れば祖母温泉に完全に下りられる。直ぐ判断せねばならぬ事態になっていた。

     空腹感はないが既に2食を摂らずにいる。食事は昨日の昼まで.丸一日.食わずに黒部へ下れるだろうか?
   もう出掛ける支度はできていた。事故でなく空腹で動けなくなることはないと思うが大事を取り諦めるしかなかった。

    杓子岳
   4:59

    下山コース
     清水尾根を諦めて最初に思ったことは再び雪渓を下ること。前年と同じ行程になる。
   兎も角,テラスにでて日の出を迎えた。既に頭上に蒼空が仰がれ.後立の山肌は次第に朝焼けの色合いを次第に強く現わしている。
   このまま雪渓を下り続けることは年齢を考えると楽だが.その後はアルプスから閉ざされる気がし悠著した。好天になっている。

     2食抜いても下山できるコースを頭に浮かべ.白馬二山を越え下るより.白馬大池から栂池高原へ抜ける方が良いかと考える。
   以前白馬三山を越え白馬大池から蓮華温泉へ下ったことがある。2度の野宿をさせられたものの女子のサブとしてピクニックのような山行だった。
   栂池高原は初めてのコース。何か起これば中腹からロープウェイもある。間食の流動食を上手く分ければ下山まで持つだろう。

     玄関に荷は置いてある。少し早いがのんびり下ればよい。清水尾根から欅平に下るのでもなく.雪渓を下るのでもなく.白馬岳越をする。
   ゆっくり北側の尾根を回り込み小蓮華岳に出向く。

   杓子岳最低鞍部.5:00
    山頂宿舎5:00一5:50白馬岳一6:22三国境一7:05小蓮華岳.・・次第に蒼空が広がりを見せていた。それに合わせ展望も開かれる。

    白馬岳
   疎らなハイカーの頂.5:51

     稜線の砂礫帯を綴ることにした。白馬岳までガスの中.頭上には蒼空が覗き込め.頂が丁度ガスとの接線になっている。
   南下する後立山の頂稜はまだガスに覆われ望められなかった。頂で疎らながらサブザックで登るハイカー達と出会っている。

     この頂には何度訪れたことになるのだろうか。初めての時はここで日の出を迎えていた。そして2日間.野宿していた。
   雪渓に水を求めたこともあれば冬山の偵察と縦走したこともある。最近では再び山に登り始め.同期と栂海新道から親不知へ下ったことも。
   今回は白馬大池へでる。

   振り返り北側の白馬岳を望む.5:54

   頂より柳又谷に現れたブロッケン現象.5:58

    ブロッケン
     馬ノ背を越える黒部川側に霧粒が掛かり.その空間にブロッケンが現れる。5人の外人グループ.女性が私の脇に並ぶ。
   「片手を上げると自分だけが鏡として映り.歩けば追ってくる!」と彼女に伝えると真似をした。
   日本語は喋れぬが片言の言葉は分かるらしい。にっこり笑い返す顔が可愛らしい。

     台風の影響で白馬岳を越えると人影は疎らすぎ.その上早い早朝。このグループと男子2人パーティが交互に入れ替わる道中になる。
   擦れ違うハイカーは全く見られなかった。三国境手前でやや風強く帽子が飛ばれそうになたが,ガスは切れるとアルプス全山の展望に恵まれた。
   四方を眺めればアルプス連山が見渡す限り続き.雲上の散策にロマンが開かれる。

    西北面に広がる柳又谷流域・・西面・・下る予定だった清水尾根への頂稜
   左景・・6:09

     柳又谷上ノ廊下の源流対岸を望む・・馬ノ背より
   源流から大きな山容の旭岳.その右隣りは小さな三角錐の小旭岳。清水平から清水岳.

     本来は下るべき清水尾根から祖母谷へ下る尾根が北側の山稜から望まれ.清水岳からの清水尾根は山蔭の裏側を直角に南方面に下っている。
   この好天を見て.やはり下るべきだったと一瞬.頭に閃いたが気持ちは落ち着いていた。それより焦る必要はないが無事.
   栂池まで気を引き締め下りなければ。

     清水岳から北西に延びるのが猫又山2308mへ綴られた尾根。下部の平坦地が猫ノ踊場.その下がカシナギ峰1686m。
   柳又谷の下流に没し.北又谷と合わさり黒薙川に入り.黒部川にでている。黒部峡谷鉄道で云う出合の黒薙駅附近になろう。
   見納めの白馬岳清水尾根.暫く眺めてから離れている。気に残る後悔はない。

    猫ノ踊場と朝日岳に挟まれた柳又谷
   中景・・柳又谷中ノ廊下.6:01

     右上は朝日岳.水谷コルに朝日小屋があり.前朝日.イブリ山へと尾根を下っている。
   朝日岳の左下は鉢ケ岳.その下の窪地が長池。今年はまだ小川温泉から北又小屋に至る林道は封鎖されているようだった。

    栂海新道の山並
   右景・・右上が三国境.5:59
    雪倉岳の右奥が黒負山(黒倉山)

    栂海新道
     登山道は馬ノ背から三国境の西側山腹を巻いている。
   小蓮華岳と白馬岳との中間にあり.雪倉岳への分岐に当たり.日本海に没する主尾根が北西に延び.親不知で日本海に没している。

     手前の三国境から左に鉢ケ岳へでて.中央に聳える雪倉岳を越え朝日岳へ。左肩越えは小朝日岳.西鞍部には朝日小屋があった。
   朝日岳は以前.2度頂に立ち.小屋に入るため往復している。それも水平道が難路とさせ.朝日小屋から登り返して北尾根を綴っていた。
   北上すると蓮華温泉への登山道を右に分け.分岐からは長栂山に至る栂海新道に入っている。標高が低い割に残雪は豊富で.お花畑が広がっていた。

     雪倉岳の山陰を黒岩山から小滝に至る中俣新道を分ければサワガニ山,更に犬ケ岳.白鳥山と綴り日本海の親不知に至る。
   ウェストン像があり親不知観光ホテル前にでる。崖縁を下り切ればヒスイ海岸にでて.当時同期大川と小さな丸石が転がる波打ち際で顔を洗っていた。
   サワガニ山と云えば今日はこの先の雷鳴坂でやや大き目の山カニを何匹も見付けていた。懐かしい山並が延々と連ねている。

    白馬岳と信州側の山麓
   上景・・6:02

     三国境を回り込み小蓮華岳への尾根伝いにでると南風は帽子が飛ばされるほど風強くなる。北側の展望も開かれ.
   妻から借りた周りに縁が付く帽子は紐で固定するも.暫し吹き飛ばされそうになった。畳んで腹の中に仕舞い込んでいる。
   風に向い振り返る南面の展望が素晴らしい。白馬沢中間尾根と杓子岳双子尾根. 更に重なるのが唐松岳八方尾根。裾.里の風景も絵になっている。

    信州側・・南東面
   下景・・白馬沢A沢ツメより.6:08

     下流の姫川流域を望むと姫川左岸のjr白馬駅からのアプローチとして猿倉の登山口が見下ろされていた。
   白馬の街並みから二股発電所が建つ二俣で南股入を左に分け.北股入の林道に入ると下流右岸の1230m附近に猿倉荘がる。
   又白馬尻は白馬岳主稜の陰になり.ここからは見付けられなかった。

    東面・・妙高連山と戸隠連峰
   手前が北股入に没する小蓮華尾根.6:08
    遠方は焼山.火打岳.妙高山と中央に乙妻山と高妻山

     小蓮華尾根の先が今日下る栂池平.高層湿原が広がる台地. 下流には栂池高原スキー場が開け.ロープウェイ・ゴンドラとで結ばれている。
   その奥が山ノ神尾根.山ノ神1990.1m三角点峰と赤倉山1649m。このコースはハイカーが少ないようだ。北小谷駅にでるが不便なのがよいのかも。

    北面・・日本海に没っする北方尾根
   三国境.分岐.6:22

     三国境は北へ延びる主尾根の正面になり.小蓮華岳の頂からは更に北方尾根の東面をも覗きもることができた。大らかに山並が眺められる。
   もう11年前になるが再び山に登り始めた頃.三国境から白馬大池への登山道を分け.雪倉岳を越え朝日岳から日本海へ。
   吹上のコルからは更に蓮華温泉への道を分け.北上する尾根の栂海新道を綴り.日本海親不知と白馬岳から越えている。

     上部は殆どが濃いガスと降雨に見舞われ.展望は利かず.又日本海は最後まで山から望められぬ山行だった。
   山中3泊した朝方は常に海岸沿いは雷雨が轟き,向かう私達に雷鳴を轟かしていた。
   そして里山から飛び抜けたのが海岸縁の国道だった。今回はこの新道への道をここで左に分け.白馬大池へ向かう。

    三国境と小蓮華岳
   背は妙高の山並.6:18

    小蓮華岳
   三国境から主稜を分け.6:24
    昔から崩壊の激しい岳.登山コースを幾度となく変え.国土地理院の標高も何度か変えている

    白馬三山と後立の峰々
   50年前と同じ展望に立つ.7:05

     1966年08月9日.2週間の山旅の後半を迎え.頂上ホテルに幕営し.日の出を迎えた白馬岳を越え.8時頃ここから同じ山容の山並を眺めていた。
   日記には当時は快晴.雲量1とある。今回は白馬岳山頂からアルプス全山の展望は丁度ガスが掛り得られなかった。
   ただここから水平面に眺める山々の迫力は素晴らしい。

     手前三国境から馬ノ背を詰めると白馬岳三山。その間奥に眺められるのが後立立山方面になる。
   左遠方は五龍岳に乗る鹿島槍ケ岳.右奥に小さく聳えるのは上高地周辺の穂高槍連峰。前穂高岳奥穂高岳と槍ヶ岳が又顕著.

    白馬三山
   右上アップ.6:34
    遠方から五龍岳.杓子岳.白馬岳.三国境

    後立山連峰と信州側に延びる尾根群
   大雪渓と白馬沢の雪渓.7:18
    杓子岳.白馬鑓ケ岳と重なり遠方は鹿島鑓ケ岳
    白馬沢出合対岸に2軒の山小屋が見下ろされる・・白馬尻荘と白馬尻小屋。本流を遡り.白い点が大雪渓の末端になる。

    松川南股入の下流・・杓子岳双子尾根
   6:34

     杓子岳双子尾根と上部の斜めの尾根が杓子尾根。
   尾根中央が小日向山で東のコルには白馬鑓温泉に至る登山道が通り.斜めの窪溝が長走沢
   中央下の白馬沢出合対岸.白馬尻に2軒の山小屋が見下ろされている。

    小蓮華岳に立つ
   小蓮華岳山頂からの展望.7:06
    北北西面・・雪倉山と朝日岳の五輪尾根。右奥が黒負山(黒倉山).

     小蓮華岳は新潟県の最高峰.頂には大きま鉄剣が立ち.以前は石仏を祀る祠も設けられていたが山頂部の崩壊で欠損している。
   小蓮華岳の標高は以前は2769mだった。2007年に山頂部が崩落し.2008年には新たな三角点標石が設置されたている。
   標高は2766mと3m低くなり.登山コースも何度となく変更されている。その跡は今でも崩れ知ることができる。

     小蓮華岳には3組が連なり一緒に頂に立っている。彼女と目が合い.彼女に「正面の尾根の末端は日本海,海岸の親不知に没している。
   海岸線は尾根陰となり雲海もあり望めぬが.その遥か彼方で雲海が途切れ.水平線が望まれていた。又足元の谷間を越えた北側の河川は下流で.
   砂金が採れる!」と教える。するとグループを引き連れている日本人が全員に判り易く説明していた。

    北東面・・雨飾山.妙高方面
   山頂より.7:07

     頂から正面の船越ノ頭までの間は痩せた砂礫帯の尾根に変わり.右手の姫川流域の里が広がりを見せていた。
   船越ノ頭の左肩から下るのは雷鳥坂.白馬大池の湖畔に降りている。
   又大池から雷鳥坂を登り小蓮華岳に至るこの尾根沿いは2009年放映のNHK「坂の上の雲」のスタッフロールの背景を担っていた。

     再び猿倉から大雪渓
     昔を想い白馬岳越えの小蓮華岳・・清水尾根を断念・流動食とブロッケン
     船越ノ頭から白馬大池を経て栂池ヒュッテ