穂高岳周辺Top                            . 
梅雨の前穂.明神岳主稜


穴毛谷.錫丈の登攀を断念

新穂高より上高地へ
霧の淀む岳沢の明神岳.登頂
              錫杖岳.前衛フェースP2.3.4    .
             雨で荒れる錫丈と前穂.明神主峰 
                 s45年(1970年)07月上旬. L松村進.m見城寿雄.田中正幸

      飛騨穴毛谷四ノ沢出合にベース,キャンプを設け.錫杖.穴毛の岩を登攀すべく.重装備で東海道線回りで高山まで出掛けてきたが.
        鉄砲水のような増水で出合さえ入れず。錫杖の河原で悩むも早々上高地へ廻り込む。
        翌日霧雨の岳沢を散策し.明神主稜を越え如何にか山登りの形を整え.下山した。


                            鎌田川錫杖沢
      , 南峰南稜   .
    概念図
   クリヤ谷錫丈沢

   笠ヶ岳穴毛谷
     1.雨. 早朝に槍見温泉着. 東京(JR東日本)=名古屋(JR西日本)=高山本線高山.濃飛交通=新穂高
             午後.雨止む事もなく小雨の中.錫杖出合まで偵察する。
     2.雨. 午前中天候待ち
            午後.新穂高より上高地へ.西穂山荘経由.奥飛観光開発(新穂高ロープウェイ)
     3.雨. 午後岳沢ヒュッテ散策
     4.雲一時小雨. 朝晩.雨強し.合間を縫い明神南沢より明神主峰へ.前穂より下る。
     5.曇. 下山.上高地=島々=新宿


    新穂高
     
    雨に濡れ新緑に萌える西穂山麓                偵察.諦めの顔はない


         夜這い
     槍見温泉.遠路高山本線より入るも.雨治まらず。槍見で待機するが天候はいっこうに治まらなかった。
       夕方地元の衆が宿にたむろい賑わう。夜半.宿の娘.夜這いが現われた。

     友の居る上,素泊まりで目的の岳がある。地元の衆も帰宅して宿は静まり返っていた。
       夜半.言葉だけでも「助けて!」と戸を叩く声が響き.まどろむ僕。2人はいびきを掻き眠っている。

     正直1人だったらと思う気は少々あった。ただ扉を開ける訳も往かず.頭から布団を被る以外なかった。
       何かが壊れている。僕は布団に被り1人.分からぬ不安と彼女の声に振えていた。

     短い時間だったと思うも長く感じられた。彼女の声が薄れ叩く音も弱くなり,漸くして諦めてくれたようだ。
       彼女を侘しく思うと同時.僕だけがその後も眠れぬ時を過ごした。

     翌日.上高地も天候は回復せず。前線は居座り.相変わらず時折激しく雨が降る。
       午後.錫丈を諦め上高地に入る。新穂高温泉.新穂高ロープウェイ=西穂高口一西穂高山荘一上高地

       1967年(s42年)08月.立山〜大喰岳,新穂高集中地


    上高地・・岳沢ヒュッテ散策
     
   遅い出発これから岳沢へ散策
       穂高岳沢カール                       ,
         雨明けの岳沢
      帳・・ 岳沢
   どんより重い雲を懸げた7月中旬の岳に帳は早かった。
     連日降り続いた雨が岩山を洗い.雲海化した雨雲が冨山の平野を埋め尽くしている。

   そして荒々しく怒濤の如く押し寄せた雲海は弱い夕暮れの斜陽した陽差しを受け.
     陽は刻一刻とその乱れる雲塊群に沈もうとしていた。

      頂稜
   闇を気にしない内は高々と昇っていた陽も.もう一時の間を開け.山向こうに沈みゆく。
     重い雨雲が堰を築き.この雪と岩の王国を支配しだていたが黄昏を迎えゆっくり谷間を這い昇って来た夕陰も闇に包まれ.
     黄昏が穂高の峰々に迫っている。

   岳沢のカールを徐々に埋め.谷から湧き生ずる白霧は黒い霧のベールに塗り変えられた。
     目の前に広がる吊り尾根を横切るよう頂稜を被っている。

   立体感を失ったジャンダルムの山稜は黒屏風の峰に変わり.裾野はいち早く帳が落ちている。
     「さぁー.早く降りなければ!」と暗黙の世界が僕等を待ち.雨が降り出すばかりに待っていた。

      岳沢の径
   明神の雪渓を詰め.前穂の吊り尾根を仰いだのが5時.黄昏が頂稜を漂っていた。
     錫丈岳.穴毛の岩場を狙い,荒天にむせび.上高地に入って漸く豊富な残雪を踏んでいる。
     その喜びも帳と競わなければならなかった。

   誰もがランタンを持たず.田中さんは靴擦れができたと嘆く。
     梓川.河畔に明かりが点もり.穂高の山々はもう完全に帳に包まれた。
     闇に浮ぶ岳沢のゴーロもおぼろな白光を放っている。

   山の凱歌も忘れぼんぼん下りだした。僕を追う見城さん.早く駆け下り幕営しなくてば。
     岳沢の帳径から河原を抜け樹林帯に入り込む。
     今までどうにか留まっていた微光も途ざえ.五里霧中の深い森が待ち構えていた。

   うっそうと生い茂る巨木林に下草は茂り.連日の雨がひっそりした森を更に湿気を漂わしている。
     深い闇の森に仕立てだしていた。森に吸い込まれるよう駆け下りた。

   野鳥も啼かなくなった闇の世界に.足音は妙な響きを立て.水溜まりの跳ねる音だけが返ってくる。
     駆け下りるだけで森のどの辺だか場所さえ分からなかった。

      靴紐
   靴紐が解けたと見城さんが足を停めた。僕は黙って径脇に腰を下ろす。
     昼間の生き生きした森は獣も.野鳥も.樹葉に漂う山気さえも,じっと堪え
     森の全てが深い闇に圧迫されているようだった。

   うずくまって靴紐を直していた見城さんが.「真っ暗になった!」.「さあ,急ごう!」と声を掛ける。
     はっきり確認できぬ先輩の物陰が僕の前に起き上がってきた。
     ぼーと.黒い影が被いかぶさるように。

      林道
   林道に出て幾らか明るさが戻ってきた。
     明るくなったと云っても闇に星が輝き出したわけだもなく.闇に目が馴れ切っている為である。
     ちょっと白味掛かった明るさに何とも云えぬ頼もしさを得.どっと今までの疲れが帰ってきた。

   もう梓川左岸を幾らか行けば照明を光々と飾した宿にでる。
     僕等は熊笹の小径を抜けて西糸屋の裏にでた。・・穂高岳沢.上高地への径


    明神岳主稜

     穂高岳概念図         涸沢周辺概念図
   北アルプス南部地形図.山行表

                         明神岳主稜縦走
          夜明けの明神岳

    翌朝.明神主稜を目指す
    
   残雪の前明神沢から入山


  
主稜には雪渓から右岸シュルント沿いに詰める                                   ,

   念のためアンザイレンした見城・田中先輩
    前明神沢より残雪を詰め明神主稜へ

   雨を縫い.霞の掛かる登行も,前半の新穂高が悪過ぎた為か快い。
     幾らかの残雪がポイントを作り.人一人いない岳がよけい気を良くしていた。

   棚場より岳沢カール

   最後のツメ

   主稜にでて

   明神の稜

   穂高を越す登る筈の錫杖岳は見えぬが曇天に浮かぶ峰々が覗まれた。
     誰も居なず我々三人が立つ頂があり.峰がある。

   雲重く垂れ掛かる頂は今日も帳に落ちそうだった。それまで何故か頂に留まっていることに固執した。
     何処も人気のない穂高の峰々が霞みを抜け穂先を覗かしていた。

   焦る気もなく頂に座り込む。ここは静寂に満ちた深い山稜の静けさだけが時を刻んでいた。
     この眺望が今回の山行の全て帳消しした満足感として抱かされていた。


    上宮川谷を望む
   明神岳V峰よりU峰と主峰東稜

    奥穂高岳とロバノ耳.ジャンダルム
    前穂岳より重い雲が帳を早める吊尾根

      雨男?
   雨の隙間を狙い岳を目指す。
     前線は動くことを知らず.最後の最後まで我々の気を持て余していた。
     全員職場のある身.変更も間々ならず強引な山行となった。

   又登攀目的が悪すぎた。沢を選んだ安易な考えは梅雨明けを考えていた。
      だが如何しても前線は動かなかった。山に入ることだけを考える。

   職場の違う3人が又一諸になるには丸一年は掛かるだろう。
     それ故,このチャンスを狙い.重装備で強行した山旅もこれで終わりに近ずく。
     背負い続けた荷はその間々岐阜.長野を廻り.使わず東京に戻ることになる。

  前穂より黄昏迫る奥穂高
   西穂の稜. 西穂.間ノ岳.天狗岳.コブ尾根ノ頭.ジャンダルム.ロバノ耳
岳沢の岩紋     ,
  梓川を望む
   霞沢岳.焼岳と中央に聳えるのが乗鞍岳
   河童橋からの岳沢
 

    梅雨明けの岳沢・・1971.06
岳沢
 1970年07月.梅雨の前穂.明神主稜
 2007年09月.嵐の大切戸と奥穂高岳

  槍見温泉「槍見館」は数年前にリニューアルされる。山宿というより中高年や女性客が好む落ち着いたフォークロアな雰囲気の宿。
  庄屋の建物を移築したそうで.重厚な木材の力強さを感じさせられるそうだ。2007年08月